EV BLOG

日産アリアにつながる過去・現在・未来
電気自動車の普及へ。日産のチャレンジ

Vol.2 日産リーフ誕生から10年、
EV環境の整備に向けた日産の取り組み

#EV普及への取組 #充電・バッテリー

2021.06.16

文:清水雅史

2020年12月、初代日産リーフの発売から10年の節目を迎えた。量産型EVを世に送り出すことの意味は大きく、それは新しい価値をもったクルマを開発し、販売するだけにとどまらない。EVのある生活を便利で快適、そして安心に過ごせるようにするためのインフラ整備と、EVの魅力をたくさんの人々に、わかりやすく伝えていく努力が、必要不可欠だったのである。日産アリアの登場とともに、EVの発展が新たなステージを迎えるいま、この10年間にEV普及のため、日産が強い意志と覚悟をもってどのような取り組みをしてきたのかを振り返る。

01
EVの普及を支えてきた
充電インフラの拡充
販売店での充電環境を整備

すべての日産販売店に普通充電設備を設置することからインフラ整備が始まった。

すべての日産販売店に普通充電設備を設置することからインフラ整備が始まった。

日産リーフの販売台数は、世界で50万台以上、国内は14万台をこえる。発売当初、国内の販売目標は年間6000台だったが、それを遥かに上回る日産リーフがオーナーのもとへ渡った。単一車種として、この販売台数は十分に誇れる数字である。

それを支えてきたのが充電インフラの整備だった。日産リーフの販売に合わせ、自宅で普通充電ができる設備の設置については、販売店で工事等の申し込みができる体制をしっかりと整えた。その一方、デビュー当初の日産リーフは、バッテリー容量が24kWhで、航続距離は200km(JC08モード)。遠出やドライブに出かけるといった使い方では、出先で充電を行うことが想定され、利便性を高めるために各所への充電器の設置を進める必要があったのである。

充電器の設置には大きなコストがかかる。 それでも日産が投資を続けてきたのは、EVの普及が生活を豊かにすると考えているからだ。そして、まず行ったのが日産の販売店への充電器の設置である。日産ディーラー全店舗(当時約2,200店)に200Vの普通充電ができる環境を整え、そのうち約200店舗には、おおよそ30分で約80%までの充電を可能にする急速充電器も設置した。これにより急速充電器設置店だけで、各店舗を中心とした半径40km圏で、ほぼ日本全国をカバーする充電網が完成し、日産リーフで日本全国を快適にドライブできる素地ができあがった。

以降も販売台数の増加に合わせて急速充電器の設置を進め、独自に充電器を開発・製造することも行った。そんな取り組みからも、いかにEVユーザーの利便性向上に力を入れていたかが推し量れる。現在は販売店の約1900店舗に急速充電器を設置している。ちなみに、現在の全国の急速充電器の設置数は約7900基。およそ1/4が日産の販売店に設置されているというわけだ。いかに日産がEVの普及に尽くしてきたか、そのための充電インフラ整備に積極的だったか。ここから日産の本気を感じ取ることができる。

高速道路などの経路充電の拡充

気軽に遠くへ出かけられるよう、高速道路のサービスエリアに急速充電器を設置。

気軽に遠くへ出かけられるよう、
高速道路のサービスエリアに急速充電器を設置。


一方、2013年に経産省の、「次世代自動車充電インフラ整備促進事業」に1005億円の予算が組まれ、その翌年にはトヨタ、ホンダ、三菱、日産の4社が、EV等の充電インフラネットワーク構築に向け新会社「日本充電サービス(NCS)」を設立した。これにより充電器の設置推進、充電ネットワークの充実がさらに進み、日産はこのNCSの事業ともしっかりと連携し、公共のインフラ整備にも積極的に関わってきた。高速道路のサービスエリアをはじめ、道の駅や公共施設、コンビニなど、目的地の途中で充電可能な「経路充電」の拡充を図るとともに、ショッピングセンターや宿泊施設など目的地における、「目的地充電」も推進したのである。


急速充電器は全国に1000ヵ所以上ある一般道のオアシス、道の駅にも数多く設置。

急速充電器は全国に1000ヵ所以上ある一般道のオアシス、
道の駅にも数多く設置。


公共の充電器は、まず利用者が使いやすそうな場所を想定して設置したが、どこの使用頻度が高く、空いていることが多いのか、といったデータを得ることができる。これを参考にしながら、またユーザーの声も反映しつつ、充電器の増設や充電スポットの設置を行い、より快適にEVライフを送れる環境づくりを進めてきた。また、日産では充電スポットの使いやすさにも配慮。その一つとして日産リーフオーナー向けの「NissanConnect EV」というアプリを開発した。充電スポット検索とルート探索/設定が可能なだけでなく、充電スポットの満空情報も確認することができ、お出かけの際のスムーズな充電をサポートしている。

ファミリーマートをはじめとするコンビニなど、チェーン店にも充電インフラ整備が進んだ。

ファミリーマートをはじめとするコンビニなど、チェーン店にも充電インフラ整備が進んだ。

02
日産リーフが社会のインフラとなる時代
新しいライフスタイルを生む、
蓄電池としての可能性。

日産は、充電インフラの整備に注力することでEVの普及を牽引してきたが、EVの進化がその使い方をしだいに変えていくと考えている。初代日産リーフは、2015年に30kWhバッテリー搭載モデル(航続距離280km)をラインアップに追加し、2017年にフルモデルチェンジすると、40kWhバッテリー(航続距離400km)を採用した。さらに2019年に発売された日産リーフe+のバッテリーは62kWh、航続距離は570kmに達した (1)。そして、日産アリアは65kWhのほか、90kWhもの大容量バッテリーを搭載し、最も航続距離が長いグレードは600kmをこえる (2)。

このようにEVが航続距離を伸ばすと、経路充電が必要になる機会が減り、充電は自宅のガレージに戻ってからというのが当たり前になるだろう。全国を網羅する充電インフラの必要性は変わらないが、これまでのように急速充電器を増やすことが最優先、という時代ではなくなる。電気自動車の利便性を発揮させるために、自宅充電を上手に活用するのがこれからのスタイル。EVに乗るということは、あなたの家にガソリンスタンドがあるようなものなのだ。別の言い方をすれば、スマホを家で充電するような使い方・・・それができることが、EVの大きな魅力となっていくのである。

そして、EVと家がつながることにより、さまざまな新しい価値も生み出されていく。「Vehicle to Home(V2H)」は、機器を介して電気自動車に蓄えられた電力を、家庭で有効活用することだ。大規模な災害等で停電が起こり、電力会社からの電力供給がストップしても、日産リーフからの供給で、電気のある生活が可能になる。それとは逆に、太陽光発電で作り出した電気を、日産リーフにためて使うということもできる。EVはクルマとしてだけではなく「蓄電池」として利用することもできるのである。

充電設備があれば、自宅でクルマとしてだけではなく、「蓄電池」として活用することができる。

充電設備があれば、自宅でクルマとしてだけではなく、「蓄電池」として活用することができる。

社会とつながりをもつ電気自動車。

さらにEVは社会ともつながる。日産は、ダイナミックプライシングによるEVの充電シフト実証事業をスタートさせることを発表した。ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスにより、商品やサービスの価格を変動させること。設定された時間に日産リーフの充電を行った場合、通常よりリーズナブルな特別電気料金プランを提供することで、時間別の電気料金がEVの充電行動に及ぼす影響を、充電データから分析・検証していくという。EVの大容量バッテリーは、社会の電力エネルギーとつなげることにより、CO2を削減する再生可能エネルギーの利用や、電力需要のピークシフトによる系統の安定化などで、重要な役割を果たすことができるのである。このほかにも日産はEVの普及を通じて、社会の変革、地域課題の解決に取り組む日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を推進。日産はさまざまな試みのなかに、EVの新たな可能性を見いだしている。

自治体やパートナーと連携し、地域特有の課題を解決する「ブルースイッチ」活動にEVを活用

自治体やパートナーと連携し、地域特有の課題を解決する「ブルースイッチ」活動にEVを活用

日産リーフが社会のインフラとなるような、こうした取り組みからもわかるように、EVは社会的に必要とされているモビリティなのである。それゆえ、厳しい道のりではあっても日産はEVの普及に努め、そのインフラ整備に力を注いできた。この10年でEVが大きく進化するなか、公共充電インフラの拡充・運営の担い手は、これまでの自動車メーカー4社が中心となり運営してきたNCSから、新たに電力会社2社により設立された、e-Mobility Powerヘと今まさに引き継がれようとしている。「クルマが人々の生活と社会を豊かにする未来」の実現を目指し、EVがクルマを超えた価値を提供する準備が整ったのである。社会は変わりつつあり、日本のEVは次のステージへと進もうとしている。

(1) 本文内の日産リーフの航続距離に関する数値は全てJCO8モードで計測した場合です。
(2) 本文内の日産アリアの航続距離に関する数値は、WLTCモードで計測した数値を前提とした、日産社内測定値。



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